教育普及・イベント
第1回国際先住民族博物館シンポジウム『先住民族×博物館』- 協働、対話、更新-(〜開催)
- 公開日:
このシンポジウムでは、アメリカ、オーストラリア、フィンランド、日本という世界各地にある6つの先住民族博物館の館長が集まり、先住民族と博物館について議論します。海外の博物館では近年、植民地主義にむすびつく収蔵品の取り扱いや展示、研究倫理等に関する議論が活発に展開されてきました。一方、先住民族自身が設立した博物館は、自文化の伝承の場であり、記憶や知識の宝庫でもあります。テーマ「先住民族×博物館」は、単に失われた過去を取り戻すことではなく、先住民族自身が新たな視点で、博物館にその価値を見出していくことにあります。
2日間の議論では、「協働、対話、更新」というキーワードを通じて、こうした複雑で繊細な「先住民族×博物館」の意義と責任、そして、未来につなぐ役割について考えます。
開催概要
日時・会場
2026年2月7日(土)10:00〜16:30
国立アイヌ民族博物館交流室(定員150名)
2026年2月8日(日)13:00〜16:30
民族共生象徴空間ウポポイ体験交流ホール(定員250名)
参加料
無料
言語
両日とも日英同時通訳
主催
国立アイヌ民族博物館
シンポジウム登壇者
- サーミ博物館SIIDA 館長 タイナ・マレット・ピエスキ 、副館長 エイヤ・オヤンラトヴァ
- 国立アメリカン・インディアン博物館(NMAI) 館長 シンシア・チャベス・ラマー博士
- オーストラリア先住民研究所(AIATSIS) CEO レナード・ヒル
特別ゲスト
- 川村カ子トアイヌ記念館 館長 川村晴道、副館長 川村久恵
- 萱野茂二風谷アイヌ資料館 館長 萱野志朗(1日目のみ登壇)
- ゲストハウス二風谷ヤントオーナー/株式会社二風谷ワークス 代表取締役 萱野公裕(2日目のみ登壇)
ホスト
- 国立アイヌ民族博物館 館長 野本正博









参加申込み
下記申込みフォームよりご登録ください。
- お申込みのない方も先着順でご入場いただけますが、定員に達した場合はご予約済みの方を優先いたします。
プログラム
2026年2月7日(土)10:00〜16:30

10:00〜11:30 プレゼンテーション1「地域を代表する先住民族博物館との協働」
- 発表1:国立アメリカン・インディアン博物館(NMAI)の活動紹介
館長 シンシア・チャベス・ラマー - 発表2:川村カ子トアイヌ記念館の活動紹介
館長 川村晴道、副館長 川村久恵
13:00〜14:30 プレゼンテーション2「音声アーカイブや民具の活用の対話」
- 発表1:オーストラリア先住民研究所(AIATSIS)の活動紹介
CEO レナード・ヒル - 発表2:萱野茂二風谷アイヌ資料館の活動紹介
館長 萱野志朗
15:00〜16:30 プレゼンテーション3「地域博物館から国立館への更新」
- 発表1:サーミ博物館SIIDAの活動紹介
館長 タイナ・マレット・ピエスキ、副館長 エイヤ・オヤンラトヴァ - 発表2:ポロトコタンからウポポイ・国立アイヌ民族博物館へ
館長 野本正博
2026年2月8日(日)13:00〜16:30

13:00〜13:30 開会のご挨拶
13:30〜14:50 パネル1「協働、対話、更新:世界の国立先住民族博物館の事例」
本シンポジウムのメイン登壇者である3つの国立先住民族博物館から、「協働、対話、更新」という3つの行動を鍵として、各館の事例を紹介し、国内登壇者とともに、複雑で繊細な「先住民族×博物館」の意義と責任、そして、未来につなぐ役割について考えます。
- 発表:シンシア・チャベス・ラマー(国立アメリカン・インディアン博物館(NMAI)館長)、レナード・ヒル(オーストラリア先住民研究所(AIATSIS) CEO)、タイナ・マレット・ピエスキ(サーミ博物館SIIDA 館長)
- コメンテーター:川村晴道、川村久恵(川村カ子トアイヌ記念館 館長、副館長)、萱野公裕(ゲストハウス二風谷ヤント/株式会社ニブタニワークス)
15:00〜15:50 パネル2「本音で話したい、先住民族博物館にとって大切なこと」
シンポジウムに先駆けた3日間、各登壇者はウポポイで働く文化の実践をする職員たちと対話を重ねます。この対話から生まれたトピックのなかから、登壇者たちがひとつずつ、話したいトピックを選択し、先住民族博物館にとって大切なことを参加者全員で議論します。
- ディスカッション参加者:シンシア・チャベス・ラマー、レナード・ヒル、タイナ・マレット・ピエスキ、エイヤ・オヤンラトヴァ、川村晴道、川村久恵、萱野公裕
15:50〜16:30 総合討論(会場からのQ&Aなど)
2月7日・8日の両日ともに、アイヌ文化保存会による舞踊公演等様々なイベントが同時開催されています。詳しくはウポポイウェブサイトをご確認ください。
登壇者プロフィール
サーミ博物館SIIDA


サーミは欧州連合で唯一公認された先住民族。サーミ博物館 SIIDA は、サーミ文化を専門とする国立博物館であると同時に、フィンランド・サーミの文化環境を扱う地域の博物館でもある。同館ではフィンランドのサーミが育んできた精神的・物質的文化を収蔵し、展示や出版物を通じて広く公開している。SIIDAの最も大切な目的はサーミのアイデンティティと文化的自尊心を支えること。サーミ博物館SIIDAは、2024年欧州博物館大賞(EMYA)、2024年フィンランド博物館大賞、2022年ヨーロッパ・ノストラ賞を受賞。欧州博物館大賞は、フィンランドの博物館としては初めてで、栄誉ある歴史的瞬間となった。
タイナ・マレット・ピエスキは、フィンランド政府の複数の省庁での職務や、EU最北端の自治体であるウツヨキ市長職など、様々な指導的立場での経験を持つ。シーダは大幅な改修と拡張を経て、展示内容と施設を充実させ、サーミの人々や一般市民により良いサービスを提供するとともに、サーミの遺産を保存している。シーダの活動は国際的に広く注目を集めている。
エイヤ・オヤンラトヴァは、SIIDAのチーフ・キュレーター。専門はサーミ文化遺産で、サーミの文化的環境、サーミの故郷における土地利用問題、サーミの祖先の遺骨返還と再埋葬に焦点を当てている。サーミ博物館SIIDAと国立アイヌ民族博物館は、2024年に連携協定(MOU)を締結している。
サーミ博物館SIIDAと国立アイヌ民族博物館は、2024年に連携協定(MOU)を締結している。



国立アメリカ先住民博物館(NMAI)

国立アメリカン・インディアン博物館(NMAI)は、スミソニアン傘下の国立博物館として、ワシントンD.C.とニューヨークのふたつの博物館とメリーランド州の文化資源センターを統括している。同館は100万点を超える資料や写真と50万点以上のデジタルデータ(写真・映像等)を含む、世界最大級かつ最も包括的な先住民コレクションを保持している。
シンシア・チャベス・ラマー博士は、2022年に同館の館長に就任し、スミソニアン傘下の博物館を率いる初の先住民女性となった。
学芸員、著者、学者であり、専門分野として南西部のネイティブアメリカン芸術と、博物館実践における協働的アプローチに焦点を当てている。NMAIではインターンとしてキャリアをスタートさせ、後にアソシエイト・キュレーターを務めた。また2021年からは収蔵資料を担当する担当副館長として、世界最大級かつ最も包括的な先住民コレクションの総合的な管理を指揮した。
チャベス・ラマー博士の先住民系譜には、サン・フェリペ・プエブロ(米国ニューメキシコ州)、ホピ、テワ、ナバホが含まれる。ニューメキシコ大学にて美術学士号、アメリカ先住民研究修士号、アメリカ研究博士号を取得。2008年には博物館分野への貢献が認められ、コロラド大学より名誉博士号授与、2023年からアメリカ芸術科学アカデミー会員。








オーストラリア先住民研究所(AIATSIS)

オーストラリア先住民研究所(AIATSIS:正式名称はオーストラリア国立アボリジナル及びトレス海峡諸島民研究所)は国内唯一の国立先住民研究所である。映画、写真、音声記録、美術品や工芸品、印刷資料など、100万点以上に及ぶコレクションを管理するとともに、高い倫理水準に基づいた研究活動、教育活動、出版事業などを行っている。
レナード・ヒルはAIATSISの最高経営責任者であり、ニューサウスウェールズ州北西部のネンバ(Ngemba)族出身の先住民である。これまで長い公務員(行政官)キャリアの中で、数多くの上級行政官職(SES)を歴任してきた。これにはAIATSISにおける副最高経営責任者兼最高執行責任者、 AIATSIS収蔵サービスグループ執行ディレクター、首相府・内閣府文化局次官補などを歴任。また国際的な取り組みにおいて数多くのオーストラリア政府代表団に関与し、指導してきた。最近では、遺骨返還や文化・外交・二国間活動への参加に関連し、日本、米国、メキシコ、グアテマラ、英国などへの派遣を主導した。
その他の国際代表団としては、フランス、ドイツ、ニュージーランド、スイス、ベトナム、国連への派遣があり、2018年にはジュネーブで開催された国連先住民族の権利に関する専門家メカニズム(UN EMRIP)へのオーストラリア代表団を率いた。また2019年9月には、国立文化機関・収集機関に関連する先住民族政策と文化について協議するため、AIATSIS代表団を率いてメキシコを訪問した。中小企業経営、先住民土地管理、研修・評価の職業資格、及び経営学の大学院資格を保有している。






川村カ子トアイヌ記念館


川村カ子トアイヌ記念館
同館は1916年に設立された日本最古のアイヌ博物館であり、2026年に開館110周年を迎える。館名は、創設者・川村イタキシロマが、息子でありのちに2代目館長となる川村カ子トにちなみ名付けたもの。三代目館長は川村兼一、2023年に四代目館長として晴道が就任した。
同館設立の背景には、隣接地域への陸軍駐屯地設置により、旭川近文地域に和人が急増したことがある。和人がアイヌコタンを見学に訪れ、先祖伝来の暮らしが禁じられ困窮するコタンの状況や、学校で子どもたちが好奇の目にさらされるといった問題が生じた。こうした中、コタンの指導者であったイタキシロマが、アイヌの民俗資料を収集し一般公開したことが、記念館の始まりとなった。
現在、同館はアイヌ民族の文化や生活習慣を伝える博物館として、生活用具や衣装などの資料を収集・展示している。また敷地内には伝統的なチセ(家屋)があり、内部見学が可能。これまで展示のほか、学校をはじめ多くの団体に対し、衣装貸出し、ムックリ演奏、古式舞踊などの体験機会を提供してきた。館長が兼一であった1985年、1987年、2000年には、イオマンテおよびその伝承活動を実施。2023年には新館が完成。
館長 川村晴道
2023年、記念館の新館完成とともに4代目館長に就任。2021年から伝統的木彫り技術や儀式について学び、2022年に旭川嵐山で伝統的チセの建設に携わる。2023年には新館のオープンに向けて、記念館のトーテムポールと柱の製作を行う。現在はアイヌの植物に関する知識を学びながら、アイヌ古式舞踊の実演や学校訪問など、多岐にわたる文化普及活動を行っている。2025年には大阪・関西EXPOの伝統芸能舞台に、古式舞踊の担い手として参加。
副館長 川村久恵
東京都生まれ。1994年より旭川へ移住し、記念館で活動開始。2000年には記念館において開催されたイオマンテに参加。2005年ころから、記念館副館長に就任するとともに、伝統的住居(チセ)の建設、神居古潭のエコツアー主催、ピリカウレシカの会を主宰、親子アイヌ語教室の開催、アイヌヴォーカルユニット・マレウレウ参加(現在も活動中)など、幅広く活動。2008年には合唱劇「カネト」旭川市文化会館第ホールにて開催。2016年、記念館の100周年を記念した事業を主導。2018年に旭川観光顕功奨励賞を受賞。






萱野茂二風谷アイヌ資料館

1958年4月、平取町字二風谷生まれ二風谷育ち。1981年3月亜細亜大学法学部卒、1990年9月に佛教大学、通信教育部、博物館学芸員課程を修了し学芸員となる。1988年1月から平取町二風谷アイヌ語教室の事務局員。1992年4月から同教室事務局長となる。1992年3月萱野茂二風谷アイヌ資料館の副館長・学芸員に就任。2006年4月1日に同資料館の館長に就任。
「萱野茂二風谷アイヌ資料館」は1972年、「二風谷アイヌ文化資料館」として開館、5年後の1977年に土地・建物・展示資料とともに無償で平取町へ移管し、それから15年間は平取町営の資料館として運営されてきた。1991年、にぶたにダム湖のほとりに「平取町立二風谷アイヌ文化博物館」が仮オープンし、旧資料館の資料はすべて博物館へ移された。1992年3月、旧資料館の建物を再利用し萱野茂の新たなアイヌ民具コレクションと新たに製作した民具資料によって「萱野茂アイヌ記念館」として再スタートしましたが、後に「萱野茂二風谷アイヌ資料館」と改称。当館の202点と平取町立二風谷アイヌ文化博物館の919点合わせて1,121点が2002年2月に国の重要有形民俗文化財に指定されました。初代館長は萱野茂(1992年~2006年)、現館長は萱野志朗(2006年4月1日~現在)。




ゲストハウス二風谷ヤント/株式会社二風谷ワークス

1988年北海道二風谷に生まれる。幼少期より、アイヌ文化伝承者として広く知られる祖父・萱野茂の影響を受け、伝統的な風習や価値観に触れながら育つ。中学校卒業後は地元を離れて進学し、寮生活を経験。卒業後の20歳で神奈川県へ移り、機械設計士として勤務する傍ら、休日にはバックパッカーとして各地を旅して視野を広げた。
24歳の時、アイヌとしての自らの文化的背景を継承し、地域に貢献したいとの思いから帰郷。外国人旅行者にも開かれた地域拠点をつくるため、ゲストハウス設立を思い立ち、開業準備として25歳でフィリピンに語学留学し、その後オーストラリアでワーキングホリデーを経験。帰国後に資金を貯め、2018年、29歳で念願の「二風谷ヤント」開業を果たした。
コロナ禍で宿泊客が激減したことを受け、新たな収入源として自身を含む5名の出資により「二風谷ワークス」を設立。札幌在住のデザイナーらと協働し、木製品に加えてアパレルやタオル類など、アイヌ文化に基づくオリジナル商品を製造・販売している。さらに2024年夏、村本大輔氏のドキュメンタリー映画に触発され、社会問題を広く考えてもらうきっかけをつくる手段としてスタンダップコメディを開始。将来的にはアメリカでのコメディ活動を目指し、表現の幅を広げている。二児の父であり、妻は歌手の萱野りえ。





国立アイヌ民族博物館

1963年3月生まれ、白老町出身。62歳。1985年よりポロトコタン(財団法人アイヌ民族博物館)に勤務。事業部学芸課長を経て、2012年に常務理事兼館長に就任。ポロトコタンの旧アイヌ民族博物館は地元白老のアイヌが設立・運営した博物館で、アイヌ文化の伝承と人材育成の基盤を作った。2012年から国立アイヌ民族博物館の構想づくりに委員として携わり、2018年4月から公益財団法人アイヌ民族文化財団民族共生象徴空間運営本部文化振興・体験交流部長、2023年6月から同財団理事兼民族共生象徴空間運営本部副本部長。国内外のアイヌ文化展の企画・制作に携わり、自ら展示作品を制作。スミソニアン国立自然史博物館特別展「AINU:Spirit of Northern People」(1999 年)の展示制作部門に参加。現在も同館の北太平洋諸民族の文化と交流史の参考資料として、アイヌの交易船「イタオマチㇷ゚(板綴舟)」が展示されている。ポンレ(ウポポイで使用しているアイヌ語のニックネーム)は、「白髭」を意味するレタンレㇰ。
国立アイヌ民族博物館は日本初めて誕生した、アイヌ文化の展示や調査研究などに特化した国立博物館。民族共生象徴空間ウポポイの中核施設として「国立民族共生公園」とともに設置され、「先住民族の尊厳を尊重し、差別のない多様で豊かな文化を持つ活力ある社会を築いていくこと」と、「先住民族であるアイヌの尊厳を尊重し、国内外にアイヌの歴史・文化に関する正しい認識と理解を促進するとともに、新たなアイヌ文化の創造及び発展に寄与する」ことをミッションとしている。



- お申込みのない方も先着順でご入場いただけますが、定員に達した場合はご予約済みの方を優先いたします。

